47:打てば響く 2012年11月28日分 転載 ビートル 11/28 21:28 なだいなだのサロン『打てば響く』2012年11月28日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−− 11月28日 口先だけにしてもらいたい まだ選挙の告示はされていないのに、各党首の街頭演説がニュースの大半を占める。それにいちいちまともに反応していたら、消耗する。まずは傍観というところ。 といいながら、この間の安倍自民党総裁の発表した「憲法9条改正。自衛隊は国防軍に。インフレ目標(物価上昇)2パーセント、成長率名目3パーセント、建設国債を日銀に引受させる」などなどの自民党マニフェストには、一言コメントしたくなった。しかし、そう思ったのはぼくだけでなく、いろんなところから飛び出したのが、面白かった。 マニフェストの発表直後、公明党の山口党首が憮然とした顔で、まず、「憲法 9条の改正は必要ない。自衛隊を国防軍と呼び変える必要もなし。建設国債引き受けのための日銀法の改正も必要ない」という反応を見せた。公明党も安倍総裁の突出ぶりには困惑しているようだ。創価学会から、「憲法9条改正には、賛成できない」との突き上げもあるのだろう。公明党は自身が、右傾した自民党と自公連合を続ける理由があるかどうか、考えざるをえないだろう。 それに「建設国債を日銀に引受させるための日銀法改正や、物価上昇2パーセント」については、日経連の米倉会長からも否定的な意見が表明された。財界の代表から賛成できないと発言されたら、寄付をもらいにくかろう。それに対して、安倍総裁は、「経団連は勉強が足りない」と批判を返している。喧嘩を売った形だ。この突出ぶりというか、はしゃぎ過ぎというかは、前回内閣を投げ出したのが「うつ」の状態とすれば、「そう」に近い、といえそうだ。どちらかというと、自陣営と考えていた人たちに首をかしげられて、ついには「この発言で円安に振れ、株価が上がった。勝負あった」などとぶつに至っては、もう暴走だ。傾げた首がもげそうだ。まわりの人たちは、この総裁の袖を引っ張って、ブレーキをかけるのに必死なのではないか。 そもそも、デフレの反対がインフレ、インフレにすればデフレから脱却できるなどという考えは、野党第一党のマニフェストとしてはお粗末すぎる。2パーセントの物価上昇を目標にするなどというのは、年金は増えず、物価が2パーセント上昇すれば、年金生活者を直撃する。公務員も、中小企業の労働者も、つまり国民の半数以上が、賃上げは望めない状況だから、2パーセントの物価上昇は、2パーセントのデフレを体験するようなものだ。円安になれば、大手の輸出産業は助かるかもしれないが、輸入で飯を食うものにとっては、それだけ損失になるのだ。海外旅行者は円高を喜びこそすれ、円安に万歳する気持ちはなかろう。こんなにハッキリと円の強さを実感できる外国旅行者も、数百万人を数える時代なのだ。 輸出と輸入がほぼ半々なら、世界から批判も受けない。極端な輸出超過は、世界の批判を招く。その分、内需を呼び起こしたいところだが、物価高で、給料はそのままだったら、消費者マインドは冷え込むばかりではないか。デフレの反対のインフレになどと思っても、日本経済の舵取りは、決して易しくも単純でもない。高校生程度の頭の政治家には、荷が重すぎる。うまくいかなくなって、また途中で放り出すのは、本人の勝手かもしれないが、国民の方は迷惑千万な話だ。 株価が口先だけで上がるなら、口先だけにしてもらいたい。それで、もう十分だ。 48:打てば響く 2012年12月13日分 転載 ビートル 12/13 19:52 なだいなだのサロン『打てば響く』2012年12月13日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−− 12月13日 マニフェストか、過去に対する責任か 選挙となると、マスコミは、各党のマニフェストに目を向けさせようとする。マスコミも協力する。これでは選挙民が、マニフェストなどを比べて選択しているような錯覚に陥っても無理はない。 騙されてはいけない。選挙は、これまでの政治の責任を問うものだ。これまでの中には、今の政府ばかりでなく、これまでの政府も含む。 子供の精神発達の程度を調べるときに、何かモノを見せると、今持っているモノを放り出して新しいものに向かうかどうかを見る。新しいものを出されても、すぐに飛びつかなくなれば、かなり成長した証拠になる。つまり、赤ん坊の時代は今に支配されるが、成長するにつれ、原因結果を、少しさかのぼって考えられるようになるということだ。 選挙に当てはめれば、目の前に出てきたものに、機械的に飛びつくのではなく、時間の幅をとって、原因と結果を考えて投票しないと、今まで左、今度は右の、簡単な選択になってしまう。政治は逆風に間切って帆を操りながら前に進むヨットのようでなければならない。右に振れるにしても、前進がなければならない。 日本再生を訴える政党は、こういう視点で見れば、その前の与党であり、今の日本の破産状態に、責任がある政党だ。壊れた日本を直すというなら、日本がどう壊れ、それに政党がどう関わり、今、どのような状態にあるか、見てから考えることだ。それに対し、どのような責任があるかをはっきりさせるのが選挙だ。日本がまるで民主党の四年間で壊れたというのは、間違いだ。日本が前の長い支配政党に壊されたから、民主党が出てきた。しかし、この党が半分、前の支配政党のような部分を持っていたから、何も変えられないどころか、旧支配政党のやりたくてできなかった増税に手を貸してしまったのだ。 その民主党をただし、さらに前へと前進させるビジョンを有権者は持つべきだ。一旦多党化してもいいだろう。 老人党を立ち上げたとき、ぼくは、落とすことを考えよう、われわれにできることは、だれを選ぶかではなく、だれを落とすかだと、選挙に対する考えを変えるように提案した。 自民党の政治を終わらせるために、たまたま民主党に票を入れるよう勧めたのであった。民主党のマニフェストに賛成したからではない。 これからの世界の展望を示さず、自分たちの世界政治の中での位置を示さず、目先の個々の問題を書き連ねただけのマニフェストだなんて、読む価値がない。読むなら、その幼稚さを批判するためであって、期待などするためではない。 これまで、政治家が過去に何をなしてきたかを考えず、公約なる口約束、つまり口約ばかりに目がいってしまっていた。だから、政治が変わらなかったのだ。 大震災とそれに続く原発災害で、今や、政治家たちが、過去に何をしたかが見えてきた。最近起こった、中央高速道トンネルの天井落下の災害もそうだ。あえて、事故などと呼ばず災害と呼んでおこう。 だが、政治家は、今もって、自分からその責任を語ることをせず、もっぱら口約ばかり述べ立てる選挙をし続ける。ぼくたちの一票は、そういう政治家を落とすために使うべきだ。 敦賀の原発は、活断層の真上に建てられていた。だれの責任だ。計画を立てたのは、どこの党か。建てられたのは、どの政党が政権の座にあった時か。安全を保証した学者はどこの大学の誰か。 池田内閣の頃から計画され、佐藤内閣の時にゴーサインが出されたのではなかったか。 建設したのはどこの大企業か。そこと結びつきの強かった政治家は誰か。調べれば分かるだろう。おそらくその政治家は死んでいるか、引退しているかだろう。だが、その二世は立候補しているだろう。二世という地位を利用して立候補するなら、親の責任も受け継ぐべきだろう。落とすべし。 49:打てば響く 2013年1月7日分 転載 ビートル 01/07 23:33 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年1月7日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 1月7日 庶民を名乗る人のメール 当然の結果だが、民主党が惨敗して、安倍内閣が発足した。 大阪の「よみうり新聞」が、どういうわけか「老人党」のコメントがほしいというので、答えた。 「この内閣を一言でいえば」 「こんなのお坊ちゃんかき集め内閣や」 「安倍内閣に何を期待するか」 「無理に期待させるな。初めから期待していない。坊ちゃんたちに庶民の気持が分かるとは思わない。喜ぶのは株屋ばかりだろう」 「新入閣の若手たちには」 「見たこともないような顔ぶれだ。見たこともない人間にどう期待すればいいのだ」 「二人の女性閣僚は」 「お隣の国には女性の大統領が選ばれる時代だ。女性が大臣になることは話題にもならん」 と、コメントしたら、たくさん意見を伺って、どれだけ紙面に反映できるかわからない、と記者が申し訳なさそうに、言い訳をした。 「そんなことわかっている。たいてい骨抜きして、これがオレのいったこと?と、思うようなコメントが載るので、新聞とはそういうものと思っている」と答えた。 ところがデスクが気に入ったらしく、かなり紙面を割いて、コメントした大部分を載せた。珍しいこともある。 関東にいるぼくには、どんな記事になっているか分からなかったが、すぐに自民党支持者と思われる、庶民を名乗る人から、メールが来た。著作権もあるので、コピーするわけにもいかないが、「お坊ちゃんかき集め、というが、代議士の子弟が40%の自民党の議員で組閣すればそうなっても当然。この内閣だけ意図してかき集めたわけではない」などなど、抗議の内容だった。自分も庶民である。だが、大いにこの内閣に期待していると締めくくられていた。名前も書かれていたので、丁重に返信したが、返信の返信はない。ぼくの返信の内容はいずれ、どこかに書く予定だ。 年金生活者は、年金が上がらないで、物価だけ上がっていったら、生活が苦しくなるのは目に見えている。これから給料を上げてもらえると思うサラリーマンはどれだけいるだろう。2パーセントの物価上昇を目標にするなんて、ばかなことを。円安に振れる。それだけで、食料自給率の低い日本は、生活費がどんどん上がる。もうすでにパンが値上がりしている。マグロなんてインフレ的な値上がりだ。国民の生活を脅かしながら、なんで日本防衛なのだろう。 日本とは何か、もう一度議論をする必要があるようだ。 50:打てば響く 2013年2月3日分 転載 ビートル 02/03 10:33 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年2月3日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 2月3日 「賢い国」のスローガン 「ちくま」連載のコラム、「とりあえず主義」の次号の題は、≪「賢い国」というスローガン≫です。これは日教組新聞のコラムに、選挙に間に合うように、「賢い国」というスローガンを提案したが、買い手がつかなかったことを残念がる文章です。無料で売りに出しているのだから、買えばいいのに、とぼやいて見せています。 ともかく、社会党も共産党も生活の党も、「賢い国」を取り上げないので、わが老人党だけでも≪日本を「強い国」ではなく「賢い国」に≫をスローガンに掲げようと思います。「強い国」をスローガンに掲げる党は、すぐに福祉を削り、軍備費をふやすだろう、といっていたら、その通りになりました。 そして、なんとしても成長路線に戻すことを考えているようです。一家の家計をやりくりしている一般家庭は、まず何としても収入を増やそうとしますかね。とにかく収入を増やすために、借金して競馬で稼いで来い、なんて亭主をけしかけますか。賢い主婦は、収入は変わらない世の中だから、何とか、賢いお金の使い方をしようと考える。そこが腕の見せ所です。 政治家の常識がいかに、生活者の常識とかけ離れていることか。 賢い国は、自分たちの住む地球環境を破壊してまで、成長を望みません。原子力発電は安いエネルギーだなどという嘘にだまされない。反対が多くて、最終処分場も決められないので、その分の経費は抜きにして計算して、安い安いといっているのです。安いエネルギーなんていう財界人がいたら、賢い人たちは、そう反論しましょう。 環境破壊の代償は、原子力の電力料金には含まれていない。賢い国は、発電量をただ増やすことを考えず、省エネルギーを考えます。省エネルギーの産業を育てます。環境保全には、省エネルギーが賢いやり方です。 武器を生産するために、エネルギーを使ってしまうのは、北極や南極の氷を解かすスピードを速めているようなもの。氷が解けて海水面が二メートル上昇することは、全世界の海岸に二メートルの津波が押し寄せることです。日本の太平洋岸だけの津波と違うのです。そしてこの津波、押し寄せたままで、引いてはいかない。 世界の二メートル以下の土地に、どれだけの畑や田んぼがあるでしょう。食糧生産はその分減ります。 こういう風に、何が人間にとって賢い選択なのか、考えるのが賢い国です。 日本のことだけを利己主義的に考えるのではなく、他人を思いやることが、結局、日本を救うことになります。 ぼくは「賢い国」なら民主党のようにバラマキ福祉はしないと思います。あれは賢くない。お金はばらまくものでなく、賢く使うものです。 何でもいいから名目上だけでも、ともかく成長することを目指したとき、バブルが起きました。その過去の経験を忘れてはいけません。あの時代、需要がないのに供給を増やした。それでも数字の上では成長だった。強い国を目指す人たちは、金融緩和だけで数字上成長させようとしています。賢い国を目指す人は、生活の質を向上させようとします。 「強い国」というスローガンに対抗できるスローガンは「賢い国」しかないですよ。 51:打てば響く 2013年2月19日分 転載 ビートル 02/19 18:48 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年2月19日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 2月19日 個人的報告 新しい本が出ます。吉岡君というケースワーカーとの共著です。出版元は 「中央法規」、精神保健白書などを出している関係で、このような種類の出版もすることになりました。 ぼくがイントロを書き、ぼくとかれとのメールのやりとり、そしてかれとぼくの、部分から成り立ちます。ぼくの部分は、常識療法。 常識療法とは何か、知らない人が多いでしょう。当然です。自分のやってきた精神療法(心理療法)にそういう名前をつけたのですから。 この本で、具体的に常識療法がどういうものであるか分かるでしょう。 今年は、家内の病気ではじまり、家内が快方に向かっている今、ぼくが上腹部痛に悩むことになりました。明日はCTスキャン明後日は胃カメラによる検査です。生まれて初めての胃カメラ、ということはぼく自身が、病気をあまりせずに、ここまで生きてきた証拠です。しかし患者することには慣れていないので、すべてを大げさに考えすぎて、若い医師たちに笑われます。 そういう次第で、感想を書くのをさぼりました。御容赦を。 今月の『婦人之友』の原稿は、自民党が準備中といわれる「イジメ基本法」についてのつむじ曲がりな感想になります。 日本ではメルケル西独首相が、安倍総理に電話をかけてきた内容についてはほとんど報道されませんでした。事実さえ知らない人が多いでしょう。もちろん円安誘導は怪しからんという内容です。日本の国債を持っている者にとって、意図的に円安に誘導するのは、故意に損害を与えられることですから。G20の主要議題がそこに集中したことは当然です。これとメルケルの電話とを結びつけた報道がなかったのは、日本の報道の力量を示すものです。 今回は短いですが、これにて失礼。 52:打てば響く 2013年3月8日分 転載 ビートル 03/08 19:27 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年3月8日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 3月8日 感想と報告 以前に自分は「前立腺がん」だと報告しました。この時の告知で、自分の人生の終楽章が始まったようだという感想も書きました。ほぼ二年くらい前になります。 それから現在までたゆまず治療中でしたが、PSA指標は落ち続けたままです。このままで済むのだろうかと思いかけた最近になって、違った展開が見られるようになりました。 最近、上腹部(胃のあるところあたり)にしつこい痛みを覚えるようになり、近くの病院を紹介され、胃カメラ、CTなどをすることになりました。 ぼく自身が医者の端くれですから、検査の前、膵臓あたりの痛みではなかろうか。もしかしたら、利尿降圧剤の副作用による、慢性膵臓炎ではないかと自己診断していました。検査の結果は、内科医に、膵臓はあたっていますが、膵臓炎ではなく、がんです。しかもかなり広がっています。もう、手術はできません。と告知されました。がんの告知は二度目。 二度目になると告知慣れです。はいそうですか。人生終楽章のなかばの展開部のエピソードですな、と受け止めることにしました。 進行を食い止め、痛みを抑えるための、放射線療法、抗がん剤両方が始まります。抗がん剤は飲み始めましたが、ボディーブローのようにじわり効いてくる感じです。 がんの方にも効いてくれればいいのですが。 ということを、皆さんにも報告します。老人党提案者として、報告の義務があるだろうと思うからです。 個人的には、今は、中途半端になっている本の企画を、どんどん実現していこう。時間との勝負だな、積極的な気持ちになりました。 中江兆民が「一年有半」を書き始めた気分です。兆民は日本で最初にがんの告知を医者に迫った人です。 「本当のことを言ってください。こっちのつごうもあります。このあと最大でどのくらい生きられますか」。 その返事が「長くて一年半」でした。 既に前回の感想に書いたと思いますが、「治らないの意味」という本を「中央法規」という出版社からだしました。題名が題名なので、奇妙な一致ですが、偶然の皮肉です。本が発売される頃になって、告知があったのです。 そちらはいいのですが、問題は老人党です。 これからのことですが、まだぼく自身はどうするか、どうできるか、考えていません。 皮肉なもので、先を見越すことのできる老人党のような掲示板は、現代の政治状況を見ていると、ますます期待されるものになっているように思えます。 しかし、この掲示板へのぼくの寄与は、これから、どうしても減少せざるを得ません。このさきのこと、皆さんにもよく考えていただきたいと思います。 ともかく一つの区切りの時期に来ているとは思います。 53:打てば響く 2013年3月24日分 転載 ビートル 03/24 09:22 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年3月24日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 3月24日 基地がなくならない限り、沖縄の戦後は終わらない 前回の感想を見て、驚かれた方もおられると思うけれど、その後、とくに自覚症状は現れず、毎日車に乗って病院まで行き、順番を待って、放射線の照射を受けて、与えられた薬(抗がん剤)をきちんとのむという、生活を繰り返しています。 さて、政府は辺野古沖の埋め立ての許可を申請しました。突然の申請です。この問題に対するぼくの態度にぶれはありません。ぼくは沖縄には基地は不要と考えています。不要であるばかりではなく、戦後60年以上も経つのに、まだ占領状態が続いているような状況は不当です。いつまでも沖縄県民に、この状態を押し付けているのは、ぼくの良心が許しません。 沖縄と国が対立したら、ぼくは沖縄の側に立ちます。 政府は基地をなくすことを考えていません。基地による沖縄の苦痛を軽減するというが、基地をなくすという発想はまったくもっていないのです。 そもそもアメリカは、戦術を変え、海兵隊を紛争地域に派遣することを、やめようとしています。その代わりに登場してきた、無人偵察機(ドローン)による作戦を重要視しているようです。このドローンも問題ありですが、今はそれには触れません。 沖縄の米軍基地は、日本の安全保障上必要だ、と政府は繰り返し述べますが、日本の安全保障に役立ったと思われる事件は、これまでに一度もありません。ただ、アメリカの戦争に役立っただけです。 アメリカは戦後、朝鮮戦争をはじめ、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争と、戦ってきましたが、朝鮮戦争をのぞいて、沖縄はそれらの戦争の直接の後方基地の役割を果たしてきました。もちろんそれらは、日本の安全保障とは関係のない戦争です。 そしてその戦争の結果はどうか。ベトナムから米国は撤退を余儀なくされた。 イラクは、現在、アメリカの願ったような状態にあるか。それとはほど遠い。こちらも、撤退を余儀なくさせられています。 アフガンではどうか。ゲリラには負けはなくとも、明白な勝利というものがない。その間、消耗戦を強いられる。経済的には、どうしても重荷になってきているという状態です。 だれが見ても、もう沖縄のような基地を持ち、そこから海兵隊を出撃させるという戦略が、軍事的な意味を失ってきていることが明らかです。なおかつ日本に基地があるのは、日本が駐留費を払い、アメリカが兵隊を訓練する場所として、基地を安価に使用できるよう提供しているからです。 日本はアメリカに忠誠心を示すために、沖縄の基地を提供しているにすぎない。アメリカは、日本が、駐留の面倒を見ているので、惰性でそれを利用しているだけです。 しかし、沖縄の人たちに取っては、基地は、生活の質の問題なのです。毎日、騒音とともに暮らすのは、もううんざりだし、危険と暮らすのも、飽き飽きした。いい加減で、米軍には出て行ってほしいのです。静かに平和に暮らしたい。 もし日本政府が、米軍の駐留を望むのなら、日本の本土のどこかに基地を探せばいいでしょう。できるなら首都の近くがいい。そうすれば基地と一緒の生活というものがどういうものかが、政治家にも、その支持者たちにも分かるでしょう。もしそのような話がでれば、基地候補地の周辺から、猛烈な反対運動が起こり、地元からの反対で、実現は不可能でしょうけれど。 外国の軍隊の駐留などない方がいいのです。それが60年も続いてしまったとは。 54:打てば響く 2013年5月4日分 転載 ビートル 05/04 12:46 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年5月4日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 5月4日 25回の照射が終わりました。ほっとした隙に風邪にやられ、気管支炎が長引き、ひどい空咳でちょっぴり体力消耗。しかし休んでいる間に考えました。 人はどう考えようと、無神論者のぼくは、死んだらそれでおしまいです。あの世などなく、地獄も天国も極楽も中世的な人間の夢です。 死後の話は嘘くさいものばかりですが、その中も一番嘘くさいのが、「死んだら靖国の英霊に」です。国の作りだした国に都合のいい嘘の代表です。英国の首相もしたディスレーリーの残した格言、「嘘には三つあり、ただのうそと、真っ赤なウソと、数字のうそ」の真ん中に当たります。 靖国の嘘は作った人たちも、その意図も、分かっています。作ったのは大村益次郎です。かれは藩をつぶし、これから国民の多数を占めている農民商人職人で国軍を作るべきだと考えた、当時の人間としては、すごい合理主義者でした。 その国軍のよりどころとして、国のために死んだものは、天皇が拝みに来てくれる神社の祭神になれる、という信仰を植えつけようとしたのです。かれは自分は合理的に考えられるが、ほとんどの日本人には、その程度の宗教性を国に与えないと、国としてまとまる意識が持てない。それでは、この先中央政府は崩壊する、という危機感を抱いたのでしょう。それを暗殺で死ぬ年に実現させます。明治2年1869年のことです。 かれは本当に先の見える男で、大阪に一大軍事基地を作ることを、明治2年の死ぬ直前に考え、後輩に計画を立てさせています。東北の後は、薩長が国の敵になると予測し、その大乱に備えさせているのです。 それで彼の死ぬ年に東京招魂社は建てられた。かれの死後10年、西南戦争が終わり、招魂社に合祀されることになった時に、靖国と名前が変わった。誰を祀るかは軍が決めたので憎き敵を排除します。敵も味方も、日本近代化のための犠牲などとは考えられません。以後、ここの神様は、お国のために命をささげた人という基準を作り、日本の官僚が、選ぶことになるのです。神様が、官僚に選ばれる。その神様をまじめに拝む気になれる人は幸いなるかな、です。 靖国には台湾神社に祀られていた北白川の宮と蒙疆神社に祀られていた北白川の宮(二人は兄弟だったのかどうか)もまとめて戦後祀られることになりました。半分はこの宮さんのためのものです。天皇家のかかわりがいかに深いかもわかるでしょう。 英霊ってどんなものですか、死んだら霊になって神社の奥に入るって信じられますか。200万以上もの霊が押し合いへし合いしているのが見る人には見えるのですか、というバカな質問を、国会でも、だれもしない。馬鹿がいなくなったのでしょう。同時に、バカを言える記者も議員もいなくなったのでしょう。 55:打てば響く 2013年5月11日分 転載 ビートル 05/11 23:56 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年5月11日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 5月11日 友人の一人から、元広告批評の天野祐吉さんが、どこかの新聞で、「強い国より、賢い国に賛成」と書かれていたとか、ぼくは見落としましたが、老人党のスローガンが、少しづつ浸透し始めた証拠です。 ともかく、天野氏は、はっきりと同意の意見を示してくださった初めての人です。そのうち、第二、第三の人が表れてくれるでしょう。最初までが待ち遠しかった。 政治は、考えも大事ですが、ネーミングも大事です。 これから、諸物価値上がりが続きます。インフレが向うの狙いなんですから。マヨネーズが値上がりしました。輸入食品の値上がりの、分かりやすい第一例です。 このコラムで予測していた通りです。これを安倍値上げ第一号と呼びましょう。実際にはパンが値上がりしていますが、バーゲン商品になっていたりで、はっきりしませんでした。電気の値上がりも安倍値上げですが、原子力発電が使えないため、など理屈をこねられて、庶民には分かりにくかった。今回は、キューピーという会社が発表してくれた。値上げ理由を円安だと指摘して。値上がりはあまり好ましくはないのですが、この株式優先の安倍政治をストップさせるためには、アベノミックスの欺瞞を、庶民に分かる言葉で知らせる必要があります。 次に、円安による値上げが来たら、声をそろえて安倍値上げ第二号と叫ぶことにしましょう。 56:打てば響く 2013年5月28日分 転載 ビートル 05/28 19:35 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年5月28日の記事を転載します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 5月28日 最近の株の暴落。アベノミックスとやらの円安政策に騙されるものも、はじめは多いだろう。しかし、こんな人工的な手段(坊ちゃんたちの考え付きそうな)では、デフレ脱却とやらはできない、とぼくは睨んでいました。『婦人之友』にそのことを書いておきました。 株屋たちが、それをはやして株価を吊り上げていましたが、もうけを得るのは、この辺が限度と考えたのでしょう。それが今度の暴落になったとぼくは見ます。 日本の株でもうけているのは日本の株屋ばかりではありません。儲けを狙う世界中の株の相場師・投機家なども、こういう機会を逃さない。かれらは、ナショナリズムには関係ありませんから、もうけられるのは、これが限度かなあと思えばさっさと手を引く。 そして数か月の浮いた気分も、もう終わりでしょう。日本のマスコミは昔から、どちらかというと政府寄りで、アベノミックスの提灯を持ってきましたが、いまごろ、この騒ぎで一番儲けたのが相場師や投機家で、損をしたのが、これから円安の付けを、諸物価値上げの形で、払わせられる日本の庶民だと気が付いているでしょうか。 でも、株暴落が、参議院選挙の前であったことが、唯一の救いです。 一方で、アメリカに勇ましくケンカを売った維新の会の橋下が、あっけなく降参してしまったのは意外でした。次号のちくまに、少しは頑張るだろうと、見込みを書いてやったのに。ちょっとがっかりでした。維新の会の議員たちが、選挙のために、謝らせたのでしょう。しかし、タイミングが良くない(かれらにとってです)。維新の会の勢いはもうこれで終わりでしょう。つまりかれらも終わり。 現在まで、ひたすら選挙の利害で結びついていた自民・公明の連合ですが、改憲に消極的な公明とは選挙が終わるまで付き合い、あとは維新の会とくっつこうか、とひそかに考えていた自民党の黒幕も、この維新の会の自滅は計算外だったのではないかなあ。 こうして自民の勢いが落ちてきたのに、それに付け込むことのできる野党がいない。野党連合を作る知恵者がいない。つまりは、少しばかり知恵の深い政治家が野党にいないということ。本当に政治家日照りですな。 ぼくは、がんとの付き合いで、なんとか頑張っていますが、白状すると、ちょっときつい。 がんの告知は、本人に、自分の残りの人生を計画させるためには都合がいい。ぼくはその恩恵を受けている。しかし、父、夫が次第に死に近づくということを知らされた近親の者たちには、この告知は、かなりな苦痛を与えている。そのことなど知ったこっちゃない、自分のことで頭はいっぱいだ、といっていられないのが、精神科医である本人。精神科医の同僚たちよ、告知のこうした一面の研究をしてくれないだろうか。それがぼくの今の気持ちだ。 |