打てば響く(『なだいなだのサロン』コラム) 転載

19:打てば響く 2009年7月15日分 転載
ビートル 07/15 22:33
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7月15日 東京都議会選挙結果をみての感想。及び軽井沢町長宛の手紙。

いよいよ総選挙が迫ってきた。今度の総選挙は、かなりの泥仕合になるのは避けられないと思う。ますます政治のイメージは悪くなり(ま実像に近くなると思えば大したことではないが)、泥仕合に巻き込まれないで、超然としていられる政治家がいたら、きっとその政治家の株は上がるだろう。だがそうした政治家が幾人いるか。
泥仕合にならないためには、まずヴィジョンを闘わせることだ。
マニフェストを書くなら、この国をどちらの方向に向けるかの長期ヴィジョンと、とりあえず、今何をなそうと思っているか、という短期ヴィジョンをはっきり分けて書くといい。たとえば、競争社会を続けるのか、相互扶助社会に向けて舵を切るのか、大国日本というゴーマニズム的な虚栄心を抱き続けるのか、そのために国内の弱者を切って棄てるのか、あくまでも実力はあっても謙譲な姿勢で、近隣に先輩として接し、国内の調和ある社会を実現し、民主主義のモデルになろうとするのか。そうした、国民に選択させる政治哲学を示さなければならない。それによって、景気対策をではなく「いかなる景気対策を」が選択の問題になってくる。麻生内閣の景気対策は、将来の日本を考えるどころか、将来の日本に付をまわすだけの、ばら撒き景気対策だ。相互扶助の精神に基づくなら
ば、お金はもっとも困っている人のために使われねばならぬ。予算が足りないときは、分捕り合戦ではなく、譲り合わなければならない。そのために必要なのが、選択の基準となる日本の未来のビジョンだ。
これが都議会選挙結果をみての感想。

次に個人的な問題であるが、軽井沢町長に宛てた手紙をこの欄で公開する。同じものを信濃日日新聞にも送るつもりだ。取り上げてくれればよし。くれなくともよし。ともかく一石を投じたい。ちょっぴり皮肉を込めているが、ぼくたちには軽井沢に夏住めるかどうかの瀬戸際であり、内容は読んでくださればお分りいただけるだろう。


軽井沢町長 佐藤雅義殿

前略、形式的季節の挨拶などは全部省略させていただき、用件のみを書きます。
先ず自己紹介からいたします。小生、中軽井沢(上の原)に別荘を立てて以来四十年になります。現在八十歳です。業は作家で、なだ いなだというペンネームを用いています。昨今は、ヴァーチャル政党老人党を、インターネット上に立ち上げています。軽井沢は夏のみの住民ですが、町民税の滞納など、一度もしたことがありません。
では用件に入らせていただきます。
先ず、お願いの件を申し上げます。一週間前、今年も軽井沢の小生の別荘を開きに出かけましたが、今年もというべきか、小生の別荘の敷地に、ゴミが投げ捨てられておりました。散乱しておらず、大きな袋ごと入り口近くに、松の幹の後に隠すように捨てられておりました。こうした不法投棄ゴミは、これまで、それを集め、自分で処理場まで車で運んできましたが、前回は新幹線利用でしたので、それもできませんでした。考えて見てください。八十の老人が、その大きなゴミ袋を抱えて、どこにもって行けばいいのでしょう。近くの集積所まで往復で一キロ半以上、痛い足を引きずっていく姿をご想像ください。しかもその日は、収拾の時間は過ぎており、また分別していないゴミは、持って行っても、捨てようがありませんでした。
お願いですから、この不法投棄のゴミを、町の手で処分してください。ゴミ不法投棄は犯罪です。空き地に町の立てた看板にもそう書かれておりました。放置されたゴミを放置したままにするのは、行政の犯罪とまではいかないにしても、それに近いのではないかと思います。十年前には、こういうことはありませんでした。これは町のゴミ行政の変化に関係があります。大きな別荘団地は個々にゴミ集積場を持って管理していますが、それ以外の土地に住む別荘族は、軽井沢を引き上げるときに出たゴミを持っていく場所がありません。かつては小生の別荘から歩いて二百メートルのところにあった集積場は、姿を消し、永住町民の住む、駅近くや公民館近くにまで、運ばねばなりません。しかも回収時間が朝早く、小生など、のろのろ歩いて数分遅れてしまったために、もう集積場の扉が閉められていたころがありました。その結果、生ゴミを持って、同じ道のりを戻らねばなりませんでした。老人にやさしい行政です。こうすれば老人には運動になり、アスレチックジムに通うことなく、活動能力を保存することができるという、高遠なお考えからでしょうか。ま、そう皮肉もいいたくなります。
ゴミ不法投棄の根には、こういう別荘住民の都合や便利を全く考慮しない町のゴミ行政があると考えられます。つまり犯罪を起こさせている原因の一つが、行政である、とわたしは考えます。
四十年欠かさず、税金をきちんと払ってきている夏季住民としては、このまま我慢しているわけにはいきません。何とか解決策を考えていただきたく、お手紙を差し上げることにしました。
わたしとしては案があります。分別したゴミを回収する車を別荘地に巡回させることです。時間を決めて決められた場所に停まる。こうすれば集積所を新しく設置するよりも費用がかからず、高齢者としてはかなり助かります。若い人が助かるのはもちろんのことです。
「最近の若い別荘族は」と、モラルの低下(困ったことではありますが)を批判しても、解決にはなりません。どうしたら、有効に不法投棄を防げるかです。どのようにして、法規を守る普通の町民の生活を、不法投棄の犯罪被害から救ってくれるかです。
前に、一度、ゴミ問題に関して、小さな雑誌に「軽井沢町長殿」と、公開の手紙を書いたことがありましたが、小さなメディアだったせいか、お目に止まらなかったのでしょう、お返事をいただけませんでした。今回は、小生も同年の家内も、肉体的な限界にあり、忍耐の限度に来ています。家内はフランス人ですが、ゴミの不法投棄がやまない軽井沢が、国際避暑地などと自慢できるかと怒っています。そしてわたしに、このゴミを持って町長室の前に不法遺棄して来ましょう。でなければ座り込みをしましょう。わざと業務妨害で検挙されて、裁判で争いましょう、と小生をけしかけていますが、小生もだんだんとそのような直接行動が必要だという思いに傾きかけています。小生が町長室にゴミ袋を抱いて座り込みし、町長殿とご対面ということになるかもしれません。そうならないことを祈るのみです。とりあえず、この手紙の内容を検討していただき、お返事をいただけることを、期待します。
こころのこもらぬ儀礼的美辞麗句など、一切いれない、用件のみのお手紙ですので、無礼とお感じになられましたら、お詫びします。一日も早いご返事と、問題の解決を、お願い申し上げます。

二〇〇九年七月十五日
軽井沢町夏季町民
なだ いなだ

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