打てば響く(『なだいなだのサロン』コラム) 転載

47:打てば響く 2012年11月28日分 転載
ビートル 11/28 21:28
 なだいなだのサロン『打てば響く』2012年11月28日の記事を転載します。

−−−−−−−−−−−−−−−
11月28日 口先だけにしてもらいたい

 まだ選挙の告示はされていないのに、各党首の街頭演説がニュースの大半を占める。それにいちいちまともに反応していたら、消耗する。まずは傍観というところ。

 といいながら、この間の安倍自民党総裁の発表した「憲法9条改正。自衛隊は国防軍に。インフレ目標(物価上昇)2パーセント、成長率名目3パーセント、建設国債を日銀に引受させる」などなどの自民党マニフェストには、一言コメントしたくなった。しかし、そう思ったのはぼくだけでなく、いろんなところから飛び出したのが、面白かった。

 マニフェストの発表直後、公明党の山口党首が憮然とした顔で、まず、「憲法 9条の改正は必要ない。自衛隊を国防軍と呼び変える必要もなし。建設国債引き受けのための日銀法の改正も必要ない」という反応を見せた。公明党も安倍総裁の突出ぶりには困惑しているようだ。創価学会から、「憲法9条改正には、賛成できない」との突き上げもあるのだろう。公明党は自身が、右傾した自民党と自公連合を続ける理由があるかどうか、考えざるをえないだろう。

 それに「建設国債を日銀に引受させるための日銀法改正や、物価上昇2パーセント」については、日経連の米倉会長からも否定的な意見が表明された。財界の代表から賛成できないと発言されたら、寄付をもらいにくかろう。それに対して、安倍総裁は、「経団連は勉強が足りない」と批判を返している。喧嘩を売った形だ。この突出ぶりというか、はしゃぎ過ぎというかは、前回内閣を投げ出したのが「うつ」の状態とすれば、「そう」に近い、といえそうだ。どちらかというと、自陣営と考えていた人たちに首をかしげられて、ついには「この発言で円安に振れ、株価が上がった。勝負あった」などとぶつに至っては、もう暴走だ。傾げた首がもげそうだ。まわりの人たちは、この総裁の袖を引っ張って、ブレーキをかけるのに必死なのではないか。
 そもそも、デフレの反対がインフレ、インフレにすればデフレから脱却できるなどという考えは、野党第一党のマニフェストとしてはお粗末すぎる。2パーセントの物価上昇を目標にするなどというのは、年金は増えず、物価が2パーセント上昇すれば、年金生活者を直撃する。公務員も、中小企業の労働者も、つまり国民の半数以上が、賃上げは望めない状況だから、2パーセントの物価上昇は、2パーセントのデフレを体験するようなものだ。円安になれば、大手の輸出産業は助かるかもしれないが、輸入で飯を食うものにとっては、それだけ損失になるのだ。海外旅行者は円高を喜びこそすれ、円安に万歳する気持ちはなかろう。こんなにハッキリと円の強さを実感できる外国旅行者も、数百万人を数える時代なのだ。
 輸出と輸入がほぼ半々なら、世界から批判も受けない。極端な輸出超過は、世界の批判を招く。その分、内需を呼び起こしたいところだが、物価高で、給料はそのままだったら、消費者マインドは冷え込むばかりではないか。デフレの反対のインフレになどと思っても、日本経済の舵取りは、決して易しくも単純でもない。高校生程度の頭の政治家には、荷が重すぎる。うまくいかなくなって、また途中で放り出すのは、本人の勝手かもしれないが、国民の方は迷惑千万な話だ。
 株価が口先だけで上がるなら、口先だけにしてもらいたい。それで、もう十分だ。

1-

BluesBB ©Sting_Band