打てば響く(『なだいなだのサロン』コラム) 転載

56:打てば響く 2013年5月28日分 転載
ビートル 05/28 19:35
 なだいなだのサロン『打てば響く』2013年5月28日の記事を転載します。


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5月28日

 最近の株の暴落。アベノミックスとやらの円安政策に騙されるものも、はじめは多いだろう。しかし、こんな人工的な手段(坊ちゃんたちの考え付きそうな)では、デフレ脱却とやらはできない、とぼくは睨んでいました。『婦人之友』にそのことを書いておきました。
 株屋たちが、それをはやして株価を吊り上げていましたが、もうけを得るのは、この辺が限度と考えたのでしょう。それが今度の暴落になったとぼくは見ます。
 日本の株でもうけているのは日本の株屋ばかりではありません。儲けを狙う世界中の株の相場師・投機家なども、こういう機会を逃さない。かれらは、ナショナリズムには関係ありませんから、もうけられるのは、これが限度かなあと思えばさっさと手を引く。
 そして数か月の浮いた気分も、もう終わりでしょう。日本のマスコミは昔から、どちらかというと政府寄りで、アベノミックスの提灯を持ってきましたが、いまごろ、この騒ぎで一番儲けたのが相場師や投機家で、損をしたのが、これから円安の付けを、諸物価値上げの形で、払わせられる日本の庶民だと気が付いているでしょうか。
 でも、株暴落が、参議院選挙の前であったことが、唯一の救いです。

 一方で、アメリカに勇ましくケンカを売った維新の会の橋下が、あっけなく降参してしまったのは意外でした。次号のちくまに、少しは頑張るだろうと、見込みを書いてやったのに。ちょっとがっかりでした。維新の会の議員たちが、選挙のために、謝らせたのでしょう。しかし、タイミングが良くない(かれらにとってです)。維新の会の勢いはもうこれで終わりでしょう。つまりかれらも終わり。
 現在まで、ひたすら選挙の利害で結びついていた自民・公明の連合ですが、改憲に消極的な公明とは選挙が終わるまで付き合い、あとは維新の会とくっつこうか、とひそかに考えていた自民党の黒幕も、この維新の会の自滅は計算外だったのではないかなあ。
 こうして自民の勢いが落ちてきたのに、それに付け込むことのできる野党がいない。野党連合を作る知恵者がいない。つまりは、少しばかり知恵の深い政治家が野党にいないということ。本当に政治家日照りですな。

 ぼくは、がんとの付き合いで、なんとか頑張っていますが、白状すると、ちょっときつい。
 がんの告知は、本人に、自分の残りの人生を計画させるためには都合がいい。ぼくはその恩恵を受けている。しかし、父、夫が次第に死に近づくということを知らされた近親の者たちには、この告知は、かなりな苦痛を与えている。そのことなど知ったこっちゃない、自分のことで頭はいっぱいだ、といっていられないのが、精神科医である本人。精神科医の同僚たちよ、告知のこうした一面の研究をしてくれないだろうか。それがぼくの今の気持ちだ。

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